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A Happy New Year!!
もう今年になって9日目だけどそんなの関係ねぇ!それがYukihanaクオリティです本当にすみません。
どうも明けましたねおめでとうございます、天華です。
2012年もよろしくお願い致します!
そんなわけでお正月SS書いてみました。
若干コミックス22巻のカバー裏ネタです。
しみじみアレンってアンラッキーだなぁと思ったので。
彼は幸せになってもらいたいキャラNo.1かもしれません。
それではお正月SS、続きからどうぞ~。
(※ヒロインがデフォルト名です。ご注意ください)
「これ、何て読むの?」
開口一番、眉根を寄せたアレンはそう言った。
手にした細長くて薄い紙きれをヒラヒラと振ってみせる。
寒さに頬を赤くしたクリスタが首を傾げたので、さらに上下に動かして“おいで”と示してみせた。
二人がいるのは雪の降る夜の大都市だった。
時刻は0時をまわったばかりだ。
周囲にはお酒を飲んだり、立ち話をしたりと、笑い声に溢れている。
それもそのはず、皆が皆寄り合って新しい年を祝っているのだ。
アレンは年明け前一番に見た顔を、年明け後も一番に眺めながら微笑んだ。
「お帰り。本部への連絡は終わった?」
「うん。明朝の汽車で戻るって伝えてきたよ」
「偉い、えらーい。クリスタ、きちんと一人で出来たんだね!」
「どんな子ども扱いよ。今年も全力で失礼ですねアレンくん」
「はいはい、新年のお願い事は“早く人間になりたい”にしましょうね」
「それ何て妖怪人間!?」
満面の笑みで「僕も一緒に祈願してあげるから」と言ってあげたのに、クリスタは呆れ顔でアレンをねめつけてきた。
「で?何を読めって?」
話題を元に戻されたので、その原因に二人揃って眼を落とす。
隣に並んだクリスタへとアレンは差し出して見せた。
「これだよ。未確認生物の君なら解読できるんじゃないかと思って」
「ねぇ、アレンはどこまで私を人外にしたいの」
「何か怪しいアジア人に渡されたんだけど……」
そこまで口にしてアレンはクリスタの手にしている物に気がついた。
自分が持っているものも正体不明だが、断然彼女のほうがレベルが高い。
胡乱気な視線を送れば金色の瞳が嬉しそうに笑った。
「もしかして同じ人かな?私もチャイナ服を着いるのに何故だか日本人だって主張する方に頂いたんだけど」
「ちょっとクリスタ。知らない人から物を貰うなって習わなかったんですか?」
「いや、私のこと言えないよねアレンもだよね」
「まったく、そんなんだからいつまでたっても君は“クリスタ”なんですよ!」
「固有名詞で貶すのはやめてくれる!?」
口元を歪めたアレンにクリスタは眉を吊り上げる。
ついでに彼女は“それ”を動かした。
パクパクと開閉しているのは恐らく口だ。
綺麗に並んだ歯と真っ赤な顔。たぶん獣を象っている。
体の部分は白い模様の入った深緑の布だけで、そこにクリスタが手を突っ込んで操っている様子だった。
「それ、何?パペット?」
人形劇でよく登場する操り人形かと尋ねれば、クリスタは首を振った。
「ううん。これは獅子舞」
「シシマイ……?しゅうまいの親戚?」
「おいしそうだな!」
アレンの素のボケにきちんと突っ込んでから説明してくれる。
「食いしん坊の発想はハズレよ。これはお正月の風物詩。獅子を象ったもので、こうやって中から人が動かして躍らせるの」
「へぇ」
「本当はもっと大きいんだけど。パペットサイズも可愛いよね」
それはちょっと頷きがたい。
だって目はぎょろりとしているし、大きな口はやはり獣のものだ。
アレンが黙ってしまうとクリスタは改めてその手元を覗き込んできた。
「私は新年のお祝いだって言って貰ったんだけど。アレンのそれは……」
「何?」
「おみくじみたいね」
思いの他ずばりと答えが返ってきたので驚いて瞬く。
「僕もお祝いだからって貰った……というか、いきなり押し付けられたんだ。でも読めなくて」
「あぁ、日本語だからね」
「へぇ……これがオミクジか」
聞いたことはある。
東洋の占術で、年始にその年一年間の運勢を占うものだ。
初めて見るそれにアレンはちょっとわくわくして訊いた。
「で、何て書いてるの?一番いいのはダイ、チ?ダイキチ、だっけ?これはダイキチ?」
そしてクリスタは今回もずばりと応えてくれた。
「大凶」
アレンは笑顔のまま固まった。
クリスタは獅子舞をパクパクと動かした。
二人の間を寒風が音を立てて通り過ぎてゆく。
「ダ、……ダイ、キョウ……?」
「うん、大凶」
冷や汗を流しながら再度確認するがフォローもなし。
クリスタはアレンからおみくじを取り上げると声に出して読み出した。
「えーっと。願望、叶いにくい。待ち人、変なのが来る。失物、出にくい。旅行、大怪我をする見合わせよ。商売、人間関係に非常に苦労する……」
その他つらつらと音読される己の運勢に、アレンは聞こえないフリをしたかった。
びっしりと紙面を埋める文字。それが示すのは最強の不幸。
あんなの読めなくて正解だ。
「ちょ、ちょっと!良いことは書いてないの?ひとつも書いてないの!?」
「書いてないねぇ」
「しみじみ言うな!」
「だって大凶だもん」
「~~~~~~っつ、じゃ、じゃあ……!」
アレンはクリスタに真正面から向き直ると、固く拳を握って叫んだ。
「恋愛運は!?」
「レンアイウン~?」
怪訝そうに繰り返されるけれど知ったことか。
「なに乙女なことを気にしてるの」
「いいから!どうなの!?」
読めないとわかっているけれど、ずいっとおみくじに迫りながら促せば、彼女は哀れみの目をむけてきた。
「聞かないほうがいいと思うけど」
「そ、そんなに悪いの……?」
あのクリスタでさえ言うのを躊躇うほどなのだと知って、アレンは絶望をせざるを得ない。
大ショックだ。今年は一年無事に生きていけるのだろうか。
「そんなに落ち込まないでよ、アンラッキーボーイ」
がっくり肩を落としているとクリスタが横から言ってきた。
そうしてまたパペットの口を動かす。
「ちょうどいいわ。獅子舞っていうのは厄を食べてくれる神聖なものなのよ。だからアレンの不幸もどんと来い!」
「どんと来いって……」
大きなため息をついた瞬間、頬に硬い物が当たった。
獅子舞の口を押し付けられたのだと悟って半眼でぼやく。
「人形にキスされても何の慰めにもなりませんよ」
「そう?」
少し心外そうな呟きと共に、同じ場所へと今度は柔らかい物が触れた。
「……………………」
それの正体がわからなくて自分の頬に手をやる。
今のは……。
振り返ってクリスタの唇を見やって、ようやくアレンは赤面した。
「……っつ、こ……っ」
「こ?」
「これは……」
「うん」
「…………………………うれしい」
俯いてしまったけれど素直に言えばクリスタが笑った。
「そう」
そして次は唇に唇を重ねられたから、アレンは落としていた肩を強張らせる。
キスはあたたかい。
外気が寒いから熱いくらいだ。
同時に手に持っていたおみくじに獅子舞が噛み付いた。
厄に食いつき、不幸を喰らう、神聖なもの。
今年一年の幸福を願う儀式だ。
クリスタもアレンの口元に優しく噛み付くと、爪先立ちを止めて身を離した。
「これは?」
顔を見られたくないのか歩き出しながら訊かれる。
アレンは今度こそ本当に素直に応えた。
「うれしい。……幸せ」
クリスタは金髪を翻して照れたように微笑んだ。
「ね、アレンの不幸なんて私が全部食べてあげる。どんと来い!よ」
染まった頬は相変わらず寒さのせいなのか。
アレンは銀灰色の瞳を見開いてクリスタの笑顔を見つめた。
何だか胸がいっぱいになる。
暖かくて優しくて、同時に切なさに貫かれるような。
その正体が幸福なのだと知っていたから、アレンは数歩先にいるクリスタに駆け寄ると、彼女と同じようにキスを贈った。
アレンが歳相応にへへっと笑うと、クリスタが声を合わせてくれる。
「「今年も、よろしく!!」」
先が見えない未来、終わらない戦乱、そのなかでどれだけ絶望に膝をつき涙を流しても、僕たちは微笑むことができるだろう。
隣に君がいれば何度だって。
アレンは寒い雪の夜に、確かなぬくもり、クリスタの手をしっかりと握りしめた。
厄に噛み付き、不幸を喰らえ、今年も笑って生きていけ!
きみといっしょに。
後日談。
「ねぇ、神田。これって何て読むんです?」
「ああ?何だよ」
「これです、これ。ここのところ。恋愛運」
「恋愛運、だと?くだらねぇ……。どうして俺がそんなもの読まないといけねぇんだよ」
「だってクリスタが読んでくれないんですよ」
「んなもん、ラビにでも訊け」
「訊きました。訊きましたけれど何故か生暖かい目で笑って肩を叩いてくるだけだったんです」
「……?ちょっと見せてみろ」
「はい」
「……………………」
「神田?」
「…………………、変なのにモテる」
「は?何?」
「だから恋愛運だよ。変なのにモテるって書いてある」
「変なのに……」
「変なのに」
「つまり」
「うるせぇ」
「それって」
「黙れ!!」
「クリスタにモテるってことですよね!?」
一気に舞い上がったアレンに神田が今年初抜刀したのは言うまでもなく。
『恋愛運:変なのにクリスタにモテる』と書き直されたおみくじを見つけたクリスタが、顔を真っ赤にしてその戦いに参戦するのも時間の問題だった。